2026/07/10 14:26
《完成された異形と、最初に作った小さな工具》
THE BLACKとして、そろそろ次の新作を作りたい。
そう考えていた頃、知人から何気ない一言をかけられました。
「ベクターのMAG JACKETは作らないの?」
まるで、作ることが当然であるかのような言い方でした。
その瞬間は、正直なところ少し笑ってしまいました。
しかし、改めて考えてみると、KRISS VECTORという存在は非常に魅力的です。
未来的で、異質なシルエット。
独特なマガジン位置。
他のエアガンとは明らかに違う、強烈な存在感。
その姿は、何かを足すことさえ躊躇するほど完成されています。
それにもかかわらず、発売から時間が経った現在でも人気は衰えず、今なお専用のカスタムパーツが発売され続けています。
さらに、VECTORユーザーだけが集まるサバゲーイベントまで定期的に開催されているほど、熱量の高いユーザーに支えられている印象がありました。
それだけ多くの支持を集めているエアガンでありながら、ふと気になる部分がありました。
マガジンです。
本体が持つ近未来的な存在感に対して、マガジンにはまだ“もっとできる余白”があるように感じました。
「この銃に、THE BLACKらしい外装を纏わせるならどうなるだろう」
そう考えたことが、MAG JACKET FOR KRISS VECTOR開発の始まりでした。
最初は、純粋な興味からでした。
しかし、ハンドガード、バレル、マガジンキャッチなど、KRISS VECTORには驚くほど多くの専用ドレスアップパーツが存在しています。
それほどまでに専用パーツが作られ続けているということは、今なおビジネスとして成立するほどの熱狂的なユーザーがいるということでもあります。
それならば。
今までになかったものを、THE BLACKから投じてみたい。
そう思うようになりました。
まずは、マガジンそのものを研究する必要があります。
そこで知人からKRISS VECTOR用マガジンを借り、分解構造を確認するところから始めました。
……しかし、最初の段階でいきなり手が止まりました。
「インナーマガジン、これはどうやって外すんだ?」
いや、外し方は分かっています。
しかし、純正のアウターシェルとインナーマガジンは、想像以上に強く固定されていました。
左右のロック機構を同時に押し込む必要があるのですが、指だけで外すにはかなり厳しい硬さです。
最終的には、マイナスドライバーを左右から差し込み、なんとかインナーを取り外すことができました。
しかしその代償として、ロック機構の周辺に傷を付けてしまいました。
この時点で、ひとつの大きな問題が見えてきます。
「MAG JACKETを製品化したとして、換装作業がここまで大変なら、それは本当に良い製品と言えるのか?」
どれほど外観が美しくても、どれほど素材が強靭でも、取り付けの段階でユーザーに負担をかけてしまえば、それはTHE BLACKが目指す上質な製品体験とは言えません。
工具に慣れていない方でも。
初めてマガジン外装を換装する方でも。
誰でも、できるだけスムーズに取り付けられること。
MAG JACKETは、そうでなければ意味がない。
そして何より、開発中の私自身が、何度もインナーを付け外しするたびにこの硬さと戦うのは避けたい。
そうして、MAG JACKET本体より先に、専用の取り外し工具を作ることになりました。
それが、UNLOCK TOOLです。

構造そのものは非常にシンプルです。
純正マガジンの左右にあるロック機構を同時に押し込むための、コの字型のツール。
しかし、ただ水平・垂直のコの字型にすれば良いというものではありませんでした。
ロック機構を押し込む際、ツールの角部分には大きな力がかかります。
もし完全な直角形状のままでは、繰り返し使用した際に応力が集中し、破損につながる可能性がありました。
そこで、UNLOCK TOOLのアーム部分は、わずかに外側へ開いた形状にしました。
この形状により、マガジンのロック機構までアームが届きやすくなり、押し込む際も必要以上に無理な力がかかりにくくなります。
さらに、アームの先端にはわずかな傾斜を設けています。
この傾斜により、ロックを押し込んだ際の力がインナーマガジンを押さえ続けるのではなく、インナーをアウターシェルからわずかにずらす方向へ逃げるようにしました。

ロックを解除する。
同時に、インナーを外しやすい方向へ動かす。
小さな工具ですが、ただ押すだけではなく、換装作業そのものを少しでもスムーズにするための形状です。
ちなみに、UNLOCK TOOLという名称には少し個人的な理由もあります。
名称の候補はいくつかありましたが、どうしても「TOOL」という言葉を使いたかったのです。
理由は単純で、私がアメリカのバンド「TOOL」が大好きだからです。
2025年12月の来日公演にも足を運びました。(あれは最高でしたね)
それくらい好きなバンドなので、この小さな工具に"TOOL"という名称を使わない理由がありませんでした。
しかし、ただ好きな単語を入れたかっただけではありません。
TOOLという言葉には、機能性、精密さ、目的のために存在するもの、という響きがあります。
MAG JACKET本体を傷つけず、純正マガジンを無理なく分解し、換装作業をスムーズにする。
そのためだけに作った小さな専用工具。
それはまさに、この製品に必要な“TOOL”でした。
こうして、わずかに外へ開いたコの字型のUNLOCK TOOLが完成しました。

通常時は少し開いた形状。
マガジンを挟み込んだときだけ、ロック機構に合わせてコの字に近い形となり、左右のロックを同時に押し込む。
手を離せば再び開き、インナーを押し込み続けることもなく、アウターシェルにも引っかかりにくい。
MAG JACKET FOR KRISS VECTORの開発は、本体ではなく、この小さな工具から始まりました。
それは、THE BLACKが大切にしていることのひとつでもあります。
強度。
剛性。
堅牢性。
そして、扱いやすさ。
どれかひとつだけでは、上質なギアにはならない。
サバゲーの環境に耐える強さと、誰でもスムーズに換装できる設計。
その両方を満たしてこそ、MAG JACKETと呼べる製品になる。
そう考えながら、次はいよいよ本体外装の設計へ進んでいきます。
(Vol.2へ続く……)
次のストーリーはこちら⇒【MAG JACKET FOR KRISS VECTOR 開発ストーリー Vol.2】

